診療・各部門
食道外科領域
当科では、悪性腫瘍、良性疾患(食道裂孔ヘルニア、食道アカラシア)など様々な食道疾患に対する診療を行っています。
手術が必要な食道疾患のうち多くは、悪性腫瘍である食道がんです。
【当科における食道がん治療方針】
食道がんの治療には内視鏡治療、外科治療、化学療法、放射線治療があります。
食道がんの根治性を第一に考えながら、がんの進行度、患者さんの全身状態やご希望も含め、その患者さんにとって最良と考えられる治療を行っています。
手術に関しては、より安全で低侵襲となることを目指して、2015年以降は胸腔鏡下食道切除術も積極的に取り組んでいます。(図1.2)
食道がんに対する定型手術は胸部食道全摘術、胃管再建術です。ただし、がんの進行度や併存疾患の状態などによっては、
胸腔鏡手術を勧められない場合もあります。その場合の開胸手術でも同様に安全で根治が目指せるようにしています。
他の臓器に浸潤したり、転移したりしていて手術が難しい進行食道がんに対しては、先ず化学療法や放射線療法を行い、がんの縮小程度に応じて追加の手術を行っています。
化学療法では標準的なプラチナ製剤と 5-FU に加え、タキサン製剤もしくは免疫チェックポイント阻害剤を追加した
3 剤併用療法を行い治療成績の向上を図っています。(図 3)。
免疫チェックポイント阻害剤については、免疫反応による特異的な副作用があるため、当院ではその副作用に応じて各診療科の専門医と協力して治療にあたっています。
放射線治療に関しては、群馬大学付属病院外科診療センターと連携して治療にあたらせていただいております。
ひとりでも多くの患者さんが根治となることを目指し、それぞれの患者さんの病状に合わせた治療を提供できるよう、日々診療にあたっています。
胃外科領域
当科では、良性疾患、悪性腫瘍など様座な胃疾患に対する診療を行っています。
手術が必要な胃疾患のうち多くは、悪性腫瘍である胃がんです。
【当科における胃がん治療方針】
2021年に改定された胃癌治療ガイドラインに沿って、内視鏡治療、外科手術、抗腫瘍薬剤による薬物療法など、標準治療(最も効果的とされる治療)を行っています。
年間100例前後の症例のうち外科手術は40例前後で、2013年以降は胸腔鏡手術を積極的に導入しています。
胸腔鏡手術は、腹部を大きく切らない手術のため、創痛が少なく、周術期の回復が早く得られます。胸腔内に癒着が少なく、癒着性の腸閉塞などの長期的な合併症も少ないと言われています。
当院では2016年より立体観察が可能な3D内視鏡システムを導入し、奥行きのある視野のもと、より安全に手術を行うことができるようになりました。
術前・術後の薬物療法は、外科化学療法室での通院治療が可能です。
一人でも多くの患者さんが根治となることを目指し、それぞれの患者さんの病状に合わせた治療を提供できるように、日々診療にあたっています。
【治療の流れ】
胃癌手術症例の当院での受診から治療の流れをご説明します。
①受診から入院まで:内視鏡検査、胸腹部CT、腹部超音波検査などにより進行度を確認します。
造影CTでは、転移性所見の有無だけではなく、動静脈の走行を確認することにより安全な手術を目指しています。
全身状態を評価し、必要に応じて他科受診を行い、麻酔科を受診します。
※貧血や通過障害など、腫瘍による症状が見られる場合には入院で検査を進めます。
②入院:手術前日に入院となります。
③手術:所要時間は術式によりますが、約3~5時間です。
④術後:HCU入室となります。翌日浅までは経鼻胃管を留置し、吻合部内腔での出血の有無を確認します。
第 1 病日:経鼻胃管を抜去し、リハビリを開始、離床を進めます。問題なければ午後にHCUを退室します。
第 3 病日:飲水より開始します。
第 4 病日:流動食を開始します。吻合部に留置したドレーンを抜去します。食事は2日毎に五分粥、全粥と食上げを行います。
食事再開とともに術前から使用していた内服薬を再開します。
第 7 病日:点滴を終了します。※経口摂取量により。継続することもあります。
第 10 病日(全粥3日目):退院予定です。退院までに栄養士から栄養指導を行います。
⑤退院後:約2週間以内に受診していただき、経口摂取の状況などを確認します。
病理診断でStageⅡ・Ⅲの症例では術後6~8週で再発予防目的の補助化学療法を開始します。
外来通院は状態が安定していれば、3ヶ月毎の受診となります。3ヶ月毎の診察および腫瘍マーカー(CEA,CA19-9)の変動
6ヶ月毎のCT検査、1年毎の内視鏡検査を行います。
当院ではがん連携パスという、かかりつけの地域の先生と連携した診療計画も行っています。
地域の先生方には3ヶ月毎、当院への通院は各種画像評価と合わせて半年毎に受診していただきます。
【術後の食事について】
胃の術後はいずれの術式でも、経口摂取量の減少により体重は減少します。高度な体重減少は予後不良因子の一つとされ、あまり体重を減らさないような栄養管理が重要です。
退院前に栄養指導を行い、食事の摂取速度、摂取量について注意を要すること、腹部膨満感などが出現した場合には、無理に摂取せずに液状の栄養剤の利用をお勧めしています。
外来通院中でも、当院栄養サポートチームによる栄養指導を随時行っています。
手術件数
年度 | 2013年 2018年 | 2014年 2019年 | 2020年 2015年 | 2016年 2021年 | 2017年 2022年 |
胃がん手術 胃がん手術 | 54 | 33 | 37 | 25 | 24 |
腹腔鏡手術割合 腹腔鏡手術割合 | 78% | 64% | 73% | 84% | 62% |